第14章 訪問者
「カホさんはもうこの生活に慣れた?」
「え?あ、うん。沖矢さんのお陰でなんとか」
「そっか」
コナン君は昴さんから聞いたのだろうか。
そもそもどうしてコナン君に私と一緒に住むことを話したんだろう
小学生に話すようなことなんだろうか
「カホさん」
「はい」
「名前、戻ってますよ」
「はい?」
「さっき教えたでしょう。沖矢さん、ではないと」
最初は何を言っているのか分からなかったが、しばらくして私がさっき昴さんの事を沖矢さんと呼んでいたことだと気づく。
「無意識に出ちゃったんですよ。今までずっと沖矢さん、だったんですから」
「じゃあこれからは直して下さいね」
「なんでそこまで名前で呼ばれたいんですか」
「好きな人に名前で呼ばれたいと思うのは普通の事ではないですか?」
「ちょっとおき…昴さん!」
「はい、なんでしょう」
なんでしょう、じゃない!
コナン君いるのに…!
昴さんってこんな堂々と言っちゃう人だったっけ
コナン君に変な風に思われたら…
私はちら、とコナン君の方を向く。
コナン君は目を点にして口をポカーンと開けて昴さんを見ていた。
先程の沖矢の言葉にコナンは目の前の彼は本当に沖矢昴、いや、赤井秀一なのかと疑った。
赤井さんってこんなこと言う人だったっけ
赤井さんからカホさんと一緒に暮らすことになったと聞いたのは1週間前のことだ。
「坊や、すまないが七瀬カホと工藤邸で一緒に住むことになった」
「は?」
「了承も得ないで勝手に決めてしまってすまない」
「え、ちょっと赤井さん?どういうこと?」
「彼女が住む家がない、と言っていたからな、一緒に住まないか、と提案したんだ」
「全然分からないんだけど。というか赤井さん、やっぱりカホさんと前から知り合いだったよね?」
「さあな、そういうのは坊やには少し難しいんじゃないのか?」
「ボク真面目に聞いてるんだけどな」
「まあ詳しいことは後日話すとしよう。今度家にでも来るといい」
「そこボクの家だけどね」
突然電話がかかってきて言われたのがこれだ。
ただでさえ存在を隠さなければいけない赤井さんが人と一緒に暮らすなんて有り得なかった。