第13章 救いの手
「では、正直に言います」
そう言うと沖矢さんは私の手を引いてコンビニの入口へと向かう。
「え、沖矢さん…!」
待って、夕飯買いに来たのに。
まだ何も買ってないのに。
というか、どうして外に出る必要があるの?
そのまま沖矢さんに連れられ外に出る。
そこにはいつかのパーティーの時に送ってもらった車が駐車していた。
「乗ってください」
「え?」
急に助手席のドアを開けられ中に乗るよう促される。
私は訳が分からない。
沖矢さんに尋ねようとすると沖矢さんはトランクに私のキャリーバッグを積んでいるところだった。
「え、ちょっと何してるんですか」
「あれ、まだ乗ってなかったんですか。手提げは後ろの席に置いておいて下さい」
「そんなこと聞いてるんじゃないです」
沖矢さんはトランクの扉をバタンと閉めて私の方へと近づいてくる。
「困ったお嬢さんですね」
そう言うと沖矢さんは私をふわりと持ち上げ、横抱きにして助手席へと座らせた。
「えっ…わっ…」
こんな外でお姫様抱っこというものをされ、助手席に乗らされたと思うといつの間にかシートベルトまで締められている。
沖矢さんは運転席に座りシートベルトを締め、エンジンをかける。
「どこ行くんですか」
「私の家です」
「え、そんな…。降ります!」
私はシートベルトを外そうと手をかけるがその手は沖矢さんに掴まれる。
そのまま手を離され、沖矢さんは私の手を上から優しく握った。
「逃げられないように、しっかり握っておきますね」
沖矢さんは笑って私の方を見た。
握られた手が熱かった。
沖矢さんは私の手を握ったまま車を走らせた。
「カホさんは私が貴方を助けるのは単なる手助けだと思っていますか」
「はい、それ以外に何があるんですか」
車は赤信号で停車する。
沖矢さんは私の方へと顔を向け、目を合わせた。
「好きだからですよ、カホさんが」
沖矢さんから告げられた言葉に私は理解が出来なかった。
沖矢さんが、私を好き?
「初めて会った時から私はカホさんが好きでした。パーティーの時のあれは本当に偶然でしたが、カホさんを助けたいと思うのは単純に困っていたからではありません」
信号が青に変わり、沖矢さんは視線を前へと戻す。