第11章 出会い
仕事が終わり家へ戻ると丁度彼女は荷物を整理し終えたところだった。
大量の段ボールが綺麗に重ねられている。
この量を1人でやったのか…。
「すいません、手伝えなくて」
「あ、いえ、自分の物ですし」
彼女はやはり俺に壁を作っている。
なるべく迷惑をかけないように、極力関わらないようにしている。
「カホさんは何か食べたい物ありますか?」
「え?」
「今から夕飯を作ろうと思って」
「あ、なら私が作りますよ。朝も作ってもらいましたし」
「いいんですよ、僕が作りたいだけなので」
彼女はそう言うと黙ってしまった。
彼女の勤めている会社はかなりの大企業だ。
恐らく彼女は相当仕事が出来て責任感も強いのだろう。
だから甘えるということをあまりしてこなかったんじゃないのか。
出会ってから彼女は俺に気を遣っては遠慮してばかりだ。
俺としては距離を詰めるためにもその壁を壊してしまいたいのだが
「カホさん」
俺は彼女に声をかける。
彼女はゆっくりと俺の目を見た。
「僕がこんなことをしておいて言えることではないんですが、僕はカホさんに気を遣ってほしくはありません。言いたいことがあるなら言って欲しいし、遠慮もしなくていいです。恋人、と言いましたが僕としては同居している恋人のように支え合って、今後は暮らしていけたらいいと思っているんですよ」
そう言うとカホは目を見開いた。
彼女は監視だと言われ気を張り詰めていたのかもしれない。
だが自分としては彼女を監視するつもりなどない。
そしたらなんのためにここまで、と言われるかもしれないのでこれは告げることはできないけれど。
「それは、監視なんですか…」
彼女はポツリと呟いた。
「監視、と言うよりはまずはこの生活に慣れてほしいので。今後ずっとこんな距離を空けたまま暮らすのは良いとは言えませんしね。
カホさんだって仕事場で気を張り詰めて、家に帰ってまで気を遣うなんてしたくないでしょう?」
彼女はコクンと小さく頷く。
「これから少しずつでいいので、意識してみて下さい。
さて、振り出しに戻りますが、何か食べたい物はありますか?」
「…特には」
「そうですか」
彼女は特に嘘をついているようには見えなかった。ぱっと食べたいものが思いつかなかったのだろう。