第11章 出会い
「あ、いえ…すごく美味しくて…感動してしまって」
「ふふ、そうですか。少し甘めにしてみたんですよ」
彼女はその後も黙々とおかずを口に入れ、綺麗に平らげてくれた。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「お口にあったようで良かったです」
彼女は今日は仕事がないらしい。
なので自分の家に戻って荷物を詰めてくると言った。
俺は今日は公安の仕事が入っていたので彼女を送ってからそっちへと向かった。
「降谷さん!お疲れ様です!」
中に入ると部下が一斉に頭を下げてそう言う。
部下が次々と書類を持ってきてそれを手短にチェックする。
一通り見終えたところで風見がやってきた。
「お疲れ様です、降谷さん」
「ああ、昨日はすまなかったな」
「いえ、そのことについてお話したいことが」
風見はかしこまってそう尋ねる。
まあ納得いってないんだろうな、今の状況に。
「俺と風見は少し席を外す。何かあったら連絡しろ」
部下にそう伝えて俺達は外へ出た。
会議室を開けてここで待ってろと風見に指示する。
しばらくして俺は缶コーヒーを2本持って中に入った。
その1本を風見へと渡す。
「ありがとうございます…」
風見は遠慮がちにそれを受け取る。
「納得してないんだろ」
風見ははっと顔を上げる。そして少しバツの悪そうな顔をした。
「正直、降谷さんの手元に置いておくのは危険だと思います。なら、他にしばらく見張りを付けさせて彼女を観察した方がいいかと」
「まあ、そっちの方が我々、いや俺と関わらずに済むだろうな」
「一緒に住むなんてあまりにもテリトリーに入れすぎだと思います。普段の降谷さんなら絶対にそうはしない」
風見は俺の目を見て言った。
風見は確かに俺の1番の部下だ。優秀だし物事も冷静に考えられる。多少鈍っている点もあるが、信頼出来る人物であるのは違いない。
だから風見が言っていることは確かに正しい。
「普段の俺なら絶対にそうはしない、そう言ったな」
「はい」
「俺もそうだと思う」
「…は?」
風見はわけが分からないと言うように怪訝な顔をしている。
「俺もここまでして彼女を見張るのはやりすぎだと思っている」
「なら…」
「組織の現場を見られた、と伝えただろ」
「ええ」
「その時に彼女に聞いたんだ
殺されてもいいか、って」