第11章 出会い
両親が亡くなった事故、これはつい先月に起こったものだ。
飲酒運転による信号無視、それによる車両同士の衝突。
さらにガソリンが引火し被害者側の車が爆発。
その車に乗っていた夫婦はなくなり、加害者は助かったという残酷な事件。
しばらくの間、メディアに大きく取り上げられていたが…
カホはその被害者側の娘だったのか
みんな消えてしまった、とはこういうことだったのか。
確かにこの事故による精神的負担は大きいだろう
だが、それであんなにも生きることに疲れてしまうものなのか
何かまだ、ここには書かれていない何かが隠されているんじゃないのか
俺はこの調査書だけでは納得がいかなかった。
彼女は今、自分の家で寝ている。
その事実にどこか安心感を覚えた。
「おはようございます」
扉を開けてリビングへ出てきた彼女は大きな瞳を開けたままフリーズしていた。
「カホさん?」
「あ、えっと…作ってくれたんですか?朝ご飯、」
「ええ、カホさんも食べるでしょう?」
「あの、そこまで迷惑はかけられません。食事は自分で作ります。じゃないと食費が…
「僕達は今恋人なんですよ?付き合ってる人にご飯を作ることがそんなにおかしいですか?」
「こ、恋人って、それは名前だけであって本来の目的は違いますよね」
「そうですけど、そんな堅苦しく考えなくていいですよ」
「…よくわかりません」
「とりあえず、普通に同居しているという形で。あ、食費はいりませんし、何か必要な物があったら遠慮なく言ってください」
「そんな、私は貴…安室さんにそこまでしてもらうつもりはなかったんですけど」
「僕がしたいだけなので」
カホは俺の言葉に納得いっていないようだ。
顔をしかめてその場に立ちすくんでいる。
「さあ、早く支度をしてきて下さい。冷めちゃいますよ」
俺は彼女を洗面所の方へ体を向かせた。
あ、そこ右ですよ、と彼女に伝える。
彼女は不安げに俺を見た。
「早く慣れてくださいね、この生活に」
俺は微笑んで彼女の肩を押した。
「「いただきます」」
彼女と一緒に手を合わせる。
彼女は卵焼きに手を伸ばし、口に運んだ。
そしてしばらく動きが止まった。
「口に合いませんでしたか?」
そう言うとカホは、はっとして俺の方を見た。