第20章 羨望
実弥は自分の荷物や家具やら運んでほしいものは全てまとめてくれている。
車も自分は使わず、そこそこの距離を私の自転車で通勤している。あの強面でチャリに乗るって大丈夫なんだろうか。
車は貸してくれているし、とっても協力的だけどやはり私一人では回らない。
筋力も全然ないし…。重いものはとっても苦労する。体中が悲鳴をあげている。
「はひゅ~…」
「悪いな、任せてばかりで」
ばっきばきで疲労困憊な体を帰ってきた実弥がベッドの上でマッサージをしてくれている。
簡単なものだけど、高等部は運動部に所属していたこともあってすごく上手。
「しょ~がないよお外で働いてるんだもん…」
「嫌…まあ~そうだけど…特にやべえって言うか。」
「え?何かあったの?」
「…いや、何も。」
実弥は外での愚痴は何も言わない。私は愚痴ばっかり言ってしまうけど、こうして徹底できるのはすごいと思う。どんどん愚痴を吐いてもらってかまわない、と一度言ったことがあるのだが…。
『家の中でくらい仕事の話はしたくねえ。お前は家が職場だから、ずっと仕事に追われて大変だろうと思うけどな。』
というこの優しさ。はい無理。好き。
「はあーこのまま眠れそう…。」
「寝ろ寝ろ、目覚ましはセットしておいてやる。」
「ありが」
「寝んのはやッ」
それだけ疲れていたということだ。
私はぐっすり夢の中へ誘われ、すうすうと寝息をたてた。