第18章 これから
そうして、一番最後に物件を見ることになった。
「築六十年やけど、半年前に改装工事が入ってほぼ新築みたいになったんよ。工事したてやから傷一つないで。えー…オートロックとモニター式のインターホン完備されとる。」
アマモリくんがペラペラと話す間、私と実弥はキョロキョロと部屋を見渡した。
「周りの住人もあんまおらんくて、まあこれから入ってくるやろうなあ。なんせ春は稼ぎ時やから。キリキリちゃんの言うてたもんはそろっとる…かな?」
「コンロが二つで浴室乾燥に…小さいけどベランダがあって、日当たりも最高だね。」
「そうそう……んで、スーパーは徒歩五分で…コンビニはちと遠いな。自転車で…十分とかか?コインランドリーもあるけど、車がいるな。駐車場は…家賃に含まれるから、まぁ実質無料みたいなもんやね。車持ってた方がお得いうことや。チャリはいくら置いてもタダ。」
「駅まで行くのも車かバスだなァ。」
「そうやね。でも、二人とも駅使わんやろ?」
実弥は私立高校の教師だし、私は在宅ワーカー。駅まで遠かろうが、お出掛けの時以外苦労はない。車は実弥が持ってるし…。
「職場もまあ、車で三十分とかか?」
「うわ、夢みたいな暮らし…俺一時間かけて通勤してるんやけど。」
条件は今までで一番良いから、あとは部屋だな…。
「本当にピカピカだね。」
「せやろ?二人暮らし用言うにはちと狭いけどなぁ。」
アマモリくんの言う通り、今いる部屋よりも明らかに狭い。それに、部屋が一つ少なかった。
今はリビングとキッチンの部屋、寝室、私の部屋と彼の部屋があるけど、これじゃあ少し不便かなぁ…。
「この二部屋をそれぞれお互いの部屋にするかやね。片っぽ寝室、片っぽを二人の共同部屋にしてもええけど…在宅ワーカーがいるんやったら個人部屋欲しいやろ?」
「猛烈に欲しいですッ!!!」
「まぁここは狭いところが難点やねぇ。」
家賃はあまり高くなく、今のところより少し高いくらい。
どうしようかと私たちは実弥と顔を見合わせた。