第18章 これから
朝になって、物音で目が覚めた。
「さむ~い」
「おい」
寝ぼける私に実弥が服を投げた。時計は朝の九時をさす。
「出掛けるぞ。準備したら降りてこい。三十分でやれ。」
「…はーい」
せっせと朝の支度をする。朝ごはんは空気を牛乳で流し込むだけ。ああ美味しい。
化粧とか着替えとか終わったら、財布とスマホと家の鍵だけを突っ込んだ鞄を片手に階段を降りて駐車場に向かう。
エンジンのかかった実弥の車の助手席に乗り込み、シートベルトを閉めた。
「寒いし眠いし最悪なんだけど~」
「じゃあこれ被って寝てろ」
寒がりの私のために積んでくれているブランケットを渡してくれたのでありがたく被って寝た。
そして再び起こされた。
「着いたぞ。」
「…あとちょっと。」
「……そんなに眠いのか?」
「昨日のお前のせいだ忘れたか」
「悪かった」
ドスのきいた低い声で言うと、一瞬で謝った。
実はとっくに起きていたのでさっさと車から降りた。
「で、どこに何の用なの?」
「あ?良いとこ引っ越して猫飼うって言っただろうが。」
「え…???」
私は唖然としてその建物を見上げた。
……不動産屋…だと…?
「いやいやいやいや」
「嘘だと思ってたか?」
「本気にしても言い出した次の日に不動産屋には来ません!!」
「まあ連絡とったらいけるっていうし…それにあそこもそろそろ契約切れるだろ。いいタイミングだ。」
「だとしても、もう少し相談してよ…。」
「お前に任せると色々理由つけていつまでもきまんねえだろ。」
…確かに。
面倒くさいとか、やっぱやめようとか挫折して永遠にきめられないと思う。
くそう、わかってやがる、この彼氏。