第4章 凹凸
眠気覚ましに彼のいれてくれたコーヒーを飲み、そのあとに焼いてくれたトーストにかじりついた。
時刻は朝の八時半。いつもより少し遅め。
「はあ~~。実弥の春休みも終わりかぁ。明日から起こしてくれないのかぁ。」
「…ったく、毎日起こす俺の身にもなれ…。」
実弥は母校キメツ学園の数学教師。学園は今春休みで、毎日というわけではないが実弥も休みが多かった。けれど、学園が始まる前に教師は色んな準備に追われる。ゆっくりできるのは今日までだ。
彼に頼りきった甘えた生活も今日までだ。
「つーか、お前は昨日までひいひい言ってた仕事は終わったのかよ。」
「終わったよ~…。」
「はあ、夜中寝ぼけんのも疲れてるからなんじゃねえか?」
「……う~ん?そ~なのかな~…。」
「……………お前、年を重ねるごとにポンコツさとマイペースさに磨きがかかってるな。」
実弥が呆れるように言う。
「つーか、お前半年くらい同じ服着てねえか?髪もぼっさぼさだしよお。いつから髪切ってねえんだ。」
「失礼な。スウェットのズボンとTシャツをここまで着こなす人私だけだよ。」
「半年間ずっとスウェットで生活した自覚あんじゃねえか」
「髪なんていいじゃん!たとえ…一年間放置していても!!」
「ヨシッ!!服屋と美容院だァ!!行くぞ!!!」
実弥が食べ終わった私の皿をせっせと片付ける。私はしばらくキョトンとしてその様子を見ていたが、私は状況を理解して慌てて台所の実弥に抗議しに行った。
「ちょっと!何で勝手に決めちゃうの!?」
「あ?そんなんじゃみっともねえだろうが。」
「バカ!まず服屋に行く服がないのよ!!」
「うだうだ言ってる暇があったら皿でも拭いてろボケェッ!!!」
少しカチン、ときて私は皿も拭かずに実弥に背を向けた。
「美容院なんて予約もしてないのに無理よ!!折角仕事終わったんだから一日中家にいるの!!ゴロゴロするの!!」
「買い物に付き合ってやれるの今日しかねえぞォ」
実弥が刺のある言い方をした。ハッとして黙りこんでいると、実弥は続けた。
「どうするんだよ」
私はイライラがおさまらなかったけれど、結局は折れた。