第4章 凹凸
朝は私が遅く起きて、彼が早く起きる。
私、霧雨は25歳。
彼…かつてお隣に住んでいた不死川実弥も25歳。
私達が同棲を始めたのは社会人になってから。実弥が誘ってきた。どうせ喧嘩が増えるだけだと最初は乗り気でなく、猛反対したけど…。お試しで一年間、と言われたから賛成したけど…。
結局何年間も続いている。
…まあ出ていきたくなったら即刻出ていくけどねッ!!!
しかし、ズルズルと続けているのはわりと快適だからというのもある。
例えば、寝室で寝ぼけたままでいる私を彼は呼びに来る。
「おい」
とっくに起きた実弥が寝室に入ってきて、ユサユサ揺すってくる
「起きろ」
「無理」
「バカタレ」
布団をバサッと剥がされ、枕にしがみつく私を引っ張る。
「痛い…!引っ張らないで、まだ眠らせてよ…!」
「アホか、不健康になるから朝は起こせって言ったのお前だろうが!」
「もう不健康で良い~…」
「……風の呼吸」
低い声でそう聞こえてきて、私は飛び起きた。
「…おはよ」
「おう、寝癖ひでえぞ。あと朝飯食え。」
「……くっそ」
一度だけ、同棲を始めた頃に寝起きの一発を食らったことがある。あれはなかなかきつい。もう二度とごめんだ。
「……お前、なんか最近夜中に起きてねえか?昨日なんか風呂はいってただろ。」
実弥がもぞもぞと動く私の寝癖を撫で付けて直す。
「え~…寝ぼけてるのかなぁ」
「おい、寝るな」
再びベッドに沈んだ私を揺する。
「実弥も寝ようよ」
「ふざけんな」
ピシャリと私の誘いを断り、彼はまた私を引っ張り起こした。