第16章 憂い
実弥はもう終わったと思っている。
私達は結婚しないまま、この話もしないまま、ズルズルと引きずって、そのまま進んでいくんだと信じて疑わない。
でもそれではダメだと、私は思う。
「実弥に、ずっと申し訳なくて、後ろめたかった。だから言わなかった、でも言わせてほしい。」
実弥は聞いてくれる人だ。優しい人だから。
話せば良い。遠慮なく堂々と。雛鶴さんが言ってくれたみたいに。
「私は、実弥に父親になる未来はあげられないの。他の人ならきっと、こんなことないの、だから、だから…!」
実弥が何か言おうとしているのがわかる。けど、きっと聞いたら負ける。実弥の優しさに私は負ける。
それはごめんだ。
「実弥と結婚して、赤ちゃん抱っこするってことが、私はできないから、実弥にはそんな思いしてほしくないから、だから嫌なの…!!!!!」
私は実弥に向かって、面と向かって話した。
「実弥が結婚しようって言ってくれたとき、すごく嬉しかった。まさか考えてくれてるって思わなかったから。」
ここらへんからこらえきれなくて、ポロポロと涙が流れた。
「でも、結婚したら、私はきっと、ずっと辛いと思うの、実弥が、私以外の人と結婚したら、こんなことにはならないんだって、思いながらいないといけない、子供欲しいって赤ちゃん抱っこしたいって、思いながらいないといけない。
私は、それがとても辛い。」
実弥は少し離れた場所から、そんな私を見ていた。
じっと真顔で聞いてくれてる。
「辛いけど…」
私はぐいっと涙をふいて、ありったけの胸の内を叫んだ。
「結婚したいし実弥のこと大好きだし子供も欲しいし他の家族羨ましいとか思うこんな自分が嫌で嫌で仕方ないの!!私!!」
「……。」
「私「わかった」」
グッと頭に手を回されて、そのままぎゅっとだきしめられた。須磨さんと違って、優しく。
……珍しい。