第16章 憂い
玄弥くんと歩いた。お隣だから、別に行く必要もないし。
「帰るの教えてくらたら母ちゃんも喜んだのに。」
「いやいや、大した用じゃないから。」
私が笑っていると、荷物を持つと言って持ってくれた。
「わ、何この荷物、重い」
「あはは、数日分の着替えとか入ってるもん。荷物自分で持つし、大丈夫だよ?」
「平気。」
…男の子だから、やっぱり私より力あるんだな。でもまだまだ小さな子に思えちゃうから仕方ない。
「姉ちゃん、この大きなクマのぬいぐるみ買ったの?」
「あはは、実弥にあげるの、私優しいから。」
「……本当に優しいね…。」
玄弥くんの顔が少し曇った。
「………あ、ごめんね…」
「え…ううん、姉ちゃんは悪くねえよ。」
実弥と玄弥くんは仲が良くない。なぜかは知らないけれど、二人を見ていたらわかる。
家に到着して玄弥くんにお礼を言って荷物を受け取り、家の中にはいった。お土産を持ってくることは連絡していたので快く出迎えてくれた。
「まあ、わざわざありがとう。」
「本当に良くできた孫だなぁ。」
いや、そんなおじいちゃんみたいな…。あ、リアルにおじいちゃんだった。
「お茶でも飲んでいく?」
「あー…。」
そういえば実弥には言ってないんだよね。ちらりと時計をみると四時半。…今日も仕事だし、まだまだ帰ってこないはず。
「うん、飲む!」
私はそう考えて、お言葉に甘えることにした。
「それで、最近はどうなのよ、その…実弥くんと。」
湯気のたつ湯呑みを置いておばあちゃんが言う。
「…何か、気をつかってもらってるなって感じ…。」
「そうか…まあ、お前もまだ若いんだから…焦ることはない。」
おじいちゃんが言う。
確かに、二人からしたら若いんだろうけど。
仕事のこととか、結婚する年齢とか考えるとそろそろな気がする。実弥が新しい人を探して、結婚するにしても時間がかかる。
……だから。
いい加減、一年間放棄していたことと向き合わないと。