第15章 寂しさ
「いやいやいや、ちょっと待って待って」
まきをさんは全然納得してくれない。これ以上どう言って良いのかわからないんだけどな。
「不死川くんは、マジで子供ができなくても結婚したいって考えていると思うの。話聞く限りはね。そこまではオーケー?」
「…はい。あんなに怒鳴ってるから。ていうか、嘘ついてたら私わかるので…。」
「けど、ちゃんはそれが嫌なんだよね?子供ができないのに結婚したくないんだよね?」
「………それは…」
私はちょっとうつむいた。
「……違う…違います」
「……それが伝わってないんじゃないかしら」
雛鶴さんが言う。
……。確かに、私、泣いてばかりで…後ろめたくて、全然話してないから。
「私…実弥から父親になる権利を取り上げてしまう気がして、後ろめたくて…。」
「…ちゃん」
「私、私だって、子供欲しいです。実弥との赤ちゃん抱っこしたい…けど、不妊治療しても何しても、無謀に近い確率で…。実弥は無理する必要ないって言うけど…。」
体が冷めきってしまう気がした。この話をすると、生きた心地がしない。
「他の人と結婚したら、実弥はこんな思いしなくて良い。父親になれる。赤ちゃんを抱っこできる。優しいからきっと、素敵な父親になって、それから、……それから…」
言葉が続かない。
突然、ぎゅっと優しく抱き締められた。
須磨さんだった。
「そこに、わ、たしは、いないけど…」
ぎゅううぅ、と力強く抱き締めてくれる。
「……わたし……そんな気持ちで……結婚して、ずっと彼と一緒にいられる自信がないんです……」
「うん…わかった、わかったよ。辛かったねぇ。」
そう言う須磨さんが涙声で、わんわん泣いていた。
他の二人は呆れたようだったけど、止めることも咎めることもしなかった。