第15章 寂しさ
「実弥は怒りました。……子供が欲しくて私と結婚したい訳じゃない、私と一緒にいたいから結婚したいんだって。こんな診断書見せてどういうつもりなんだって。」
たかがそれほどのことで揺らぐ決意ではない。彼はそう言った。
「……私も…頭で……理解してるんです…」
『諦めたら良いだろ、俺は構わねえ』
正しいのは実弥だ。彼は正しい。正しい、けど。
「でも私といると、彼は子供ができない。父親になれない。本当はなれるんです。私のせいで、それは叶わない。」
「………だから…断ったの?」
私は頷いた。
「……実弥に怒られて、私も泣いてしまって、その夜は終わりました。」
ははは、と乾いた笑いをすると三人ともしんみりとしてしまった。…まあそうなっちゃうよね。
「私…わかれようとしたんです。もう限界だと思って。あの部屋を出て、実家に帰ろうって。だけど、実弥は嫌だって言ったので…その結果、関係は続くことになりました。」
「………そうだったんだ…。」
「正直、気まずいところもあります…。」
三人は顔を見合わせて、改めて私に向き直った。
「ちゃんはどうしたいの?」
「…私?」
「何か、話聞いてたら不死川くんのことばっかだしさ…。ちゃん、あんまり自分のこと話せてないんじゃない?」
まきをさんにそう言われて、慌てて弁明した。
「で、でも、悪いのは私ですし、そんなに言えないです…」
「はあぁ!?私が悪い!?本気でそう思ってるの!?」
「ちょっとまきを…!!」
ぐいぐい迫るまきをさんを雛鶴さんが止める。
「ちゃん何も悪くないじゃん!!そんな風に考え込むの良くないって!!」
「でも…」
「でもじゃない!!」
まきをさんは憤慨していた。
私はおろおろと色々話したが、納得してくれなかった。