第13章 憩い
近くに地元で有名なカフェがあるらしい。私たちはそこに向かって地道に歩いていた。
その途中で、私たちの反対方向から歩いてくる家族が見えた。私たちと同じく旅行らしい。
横断歩道一つを挟んだ向こう側にいる。小さな男の子が二人。そして母親と父親。
「この信号超えたらすぐだよ。」
まきをさんが声をかけてきた。私は少し遅れて返事をした。
赤信号を待つ間、車の音が静かに聞こえた。子供のはしゃぐ声が大きく聞こえた。
「ままあ、だっこ」
弟だろうか。もう一人の子と比べて体が小さい男の子が母親に甘えていた。何気なくじっとその姿を見ていた。
青信号になって、私たちは歩き出した。当然、向こう側にいたあの家族も歩き出す。
兄と見える男の子が、父親の手を離してとててて、と軽やかに走り出した。
「ああ、こらこら」
父親が追いかける。それに振り返る。後ろを向いて走り続けたので、前を見ていなかったせいか、私の足にぶつかった。
避けられたけど、避けたら転んで怪我しちゃうかもだし、避けなかった。
「いたーい」
「あ、すみません…!!」
父親が私に謝る。横断歩道の途中だったので、焦るように去ってしまった。
私たちもさっさと渡った。
「可愛かったね、今の子たち!」
須磨さんがニコニコ笑って言う。
「……そうですね」
私は微笑んで、そう答えた。