第13章 憩い
公衆電話からの着信は非通知になるから、出ないかなと思ったけど、出てくれた。
『もしもし?』
出てくれたことに安心して、私は答えた。
「もしもし、実弥?今大丈夫?」
『あ?…お前かよ。』
そういうと、少しガタガタ電話の向こうから音がして、しばらくしてから彼の声がした。
『今昼休憩中だから別にいいぞォ』
「え?今?…もうお昼の時間だいぶ過ぎてない?」
『家が職場だとピンとこないかもしれねえが、現場ってのはそういうもんだ。』
「む、私が働いてないと言いたいのかね。」
十円玉を追加して、話を続けた。
もったいないけど折角だから話したい。
『お前の収入とか仕事内容は把握してねえが、お前が俺より稼いでることは知ってんだ。文句ねえよ。』
「わあ、隠してたのに。」
『お前の金の使い方見てたらわかるわ。それより、何の用だぁ。』
「スマホをホテルに忘れちゃったのに、三人とはぐれちゃったの。須磨さんとは連絡とってるみたいだし、電話ボックスまできてって伝えてほしくて。」
『ちょっと待て。』
私は十円玉を二枚追加した。
良かった。運よく十円玉めちゃくちゃ持ってて。
『あー、何だ?はぐれたって?』
「うん。まじ迷子。私、25歳。」
『アホ。』
実弥が大きく頭を抱えている。のが目に浮かぶ。
「親切な人に案内してもらったの、公衆電話にいるの。伝えて欲しいー。」
『お前なあ…。』
「すごいいい人だったよ。写真家なんだって。」
『あっそ。』
「あ、ちなみに男の人です。」
『いい加減怒るぞ。』
ですよね。
実弥はこういうことにうるさいからなあ。男の人についていくな。道案内も頼むな、逆ナンの常套手段だから。と、今日みたく迷子になった日に怒られたことがある。
てか逆ナン何かするか。私そんなキャラじゃないでしょ。
「ごめんごめん、じゃあ頼むね。」
『はあ、ったく、すぐ須磨さんに連絡とるよ。』
「ありがと。」
そこで電話が切れた。十円玉が効果ぎれ。
あとは、あの三人を待つだけだな。