第78章 舞う
電話をポケットに突っ込み、みんなの元へ戻る。
「何かあったの?顔色が悪いわ。」
胡蝶が躊躇いがちに声をかけてきた。まだ時透は舞いを続けていた。
「…が…」
「!まさか、間に合わなかった…!?」
「いや…でも、……医者は、もう最後かもしれないって言ってるらしい。」
「最後、って」
胡蝶の顔から血の気が消える。時透が様子の変わって俺たちの方へ視線を向ける。何があったのか舞台の上からではわからないから、気になるのだろう。
しかし動きを止めることもなく動き続けていた。
ゴン、と頭に鈍い痛みが走る。
木谷さんだ。
木谷さんが俺の頭殴りやがった。しかも、そこそこ強く。
「っ、あんた」
「僕が舞う。これでも風の呼吸の真髄は心得ているよ。」
木谷さんがぶっきらぼうに言った。
「行けよ。“不死川”。……側にいてあげて。」
「…。」
続いて、自分よりも小さな手が力強く俺の背中を押した。
「行って。は私たちが必ず呼び戻すわ。」
「…胡蝶」
「あなたは行かなきゃダメ。無一郎くんにはうまく言っておくから。二人の関係のことは言わないわ。誓って。」
俺はその言葉に決心を固めた。
……ああ、胡蝶には助けられてばかりだ。
「…すみません、頼みます。」
俺は二人に頭を下げて、駐車場へと走った。