第77章 名前を探して
それから数日後。日が経って霞守の容態は安定しているようだった。
しかし学園内はまだ騒然としていた。
「霞守くんの妹、学校に来てないわねえ。」
「そうかい。」
胡蝶が話しかけてくるので適当にあしらった。阿国の話はどうも聞いていて落ち着かない。
阿国は学校をサボり続けているらしい。
あの二人の家庭環境を学校は疑い始めているが事態が前に進まないらしい。
霞守の両親はいつも忙しい。
母親は話が通じない。どうも精神の病らしくて学校側の人間と話はできない。俺も一度会ったことはあるが、難しいだろうと思う。
父親は神主であり、忙しく学園側の相手と話す時間もない。
「明日から夏休みなのに、不穏ね。」
「……だからって何をどうしてやれんだよ。家があの様子じゃ難しいだろ。」
「情けないことばかり言わないで。一緒に行きましょうよ。」
胡蝶は勝手に話を進める。
「は?行くってどこにだよ?」
「家よ、霞守くんのね。」
「……待て、俺らはアイツの担任でも何でもねェんだぞ。」
「だからって、神社に行っちゃいけないなんてことはないでしょう?」
……こいつ、意外と行動的だし理屈になってないこと言うよな…。
俺は何度も抗議したが、胡蝶が聞き入れることはなかった。結局、仕事終わりに二人で神社へ向かうこととなった。