第75章 安らぐ悪夢
俺はボーッとテレビを見ていた。
「お風呂ありがとー、先生」
「…。」
俺は振り返ってジロリと睨みつけた。
阿国は服がないだろうからとの服を貸してやった。…アイツは許してくれるだろう。
多分、服を貸さないままの方がアイツは怒る。
「明日は学校サボって兄さんのところに行こうかな。」
「そうかい。」
「先生はお風呂入んないの?」
阿国が俺の隣に腰を下ろす。
「……朝風呂派なんだよ。俺は。」
「嘘だあ。阿国が入っちゃったからでしょ?」
俺の顔を見上げながらニヤニヤと笑う。
…チッ。心読んでやがんのかァ。
「女子中学生が入った後のお風呂は嫌?」
「……」
「先生のエッチ」
「お前放り出すぞ……?」
「ひどいことされるーって叫ぶよ?」
「……。」
何なんだこいつは。と似てるのは顔だけで中身は全くの別人だとわかる。
「…風呂入ってくる。」
「じゃあおはぎくんも連れてって。」
「……。」
俺はおはぎを抱き上げて風呂の準備をしに自分の部屋に入った。
「女子中学生が家にいるとこうなのか、三者面談で頭抱えてる親父さんの気持ちが初めてわかったなァ、おはぎ」
「んにゃぁ〜」
男一人と一匹で慰め合い、俺は風呂に入った。
風呂入るには遅い時間で面倒くさかっただけなので、別にやましい気持ちなんてない。
いつも通り早めに上がって、体を拭いて髪を乾かして風呂から上がった。
脱衣所から出ると除け者にされたおはぎが俺に擦り寄ってきた。抱き上げてリビングに戻ると、阿国はテレビの前に張り付いてじっとアニメを見ていた。
「……。」
何のアニメかは知らないが、家族団欒のシーンなのはわかった。俺はリモコンを持ち上げてテレビに向けた。
「あ」
「テレビから離れて見ろ」
「むー。いいところだったのに何で消しちゃうの。」
「遅いんだからもう寝ろ。」
「いいじゃん。家じゃアニメ禁止なの。」
「だめだ。寝ろ。」
「そんなこと言ってもどこで寝たらいいの。」
阿国が言うので、俺は頭を抱えた。
ああ、問題が山積みだァ…。