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キメツ学園ー未来編【鬼滅の刃】

第74章 さらば雨雲


時透は話を聞くに、学園から電車で二駅ほどのところに住んでいた。
車だとすぐだろう。相変わらず雨で視界が悪い。


「なあ」

「何ですか」


もう到着すると言うところでハンドルを回しながらなるべくさりげなく尋ねた。


「阿国は、霧雨さんに似てるか」


時透は答えない。しばらく沈黙していたが、小さく答えた。


「阿国は、師範です」

「!」

「僕のことを忘れてるだけで、本当は…」


そこで車を止めた。道を間違えていなければすぐそこに時透の家があるはずだ。


「阿国は霧雨さんじゃない、分かってんだろ」


俺は車のエンジンを切ってそう言った。


「でも!」

「違うもんは違うんだよ!!」


気づけば怒鳴っていた。

本当の霧雨は…今は……。


「そんな…そんなことないです!!師範は言ったんです!!生まれ変わったら、全て忘れて生きたいって!」


時透は興奮気味に言った。


「だから、阿国は全部忘れちゃった師範なんだ…!絶対そう…!!」

「時透、それは」

「……師範はそう言うと同時に…生まれ変わりたくないとも言った…阿国が…阿国が師範じゃなかったら…」


きゅっと唇を噛む。


「師範は、どこにいるんですか」


その青い目に涙が溜まっていく。


「僕は、会いたいって、会いに行くって言ったのに」


俺はその様子を見つめていた。

…おい、。


お前、こんなに思われてんのかよ。何が会えないだふざけんな。何をうじうじしてやがる。お前はこいつに会って、一発殴られちまえ。

だから。


だから、目ェ覚ませ、阿呆。


こんなにも一途にお前に会いたいって泣いてる子供を放って逝くなよ。

本当は大好きなくせに、大嫌いなフリをする。
会いたいのに、会いたくないフリをする。

お前はそうしてずっと時透を突き放してきたんだろう。一定の距離をとって。触れ合わないよう。目も合わせないよう。

心を殺して時透を鬼殺隊として育てた。本当は、他の道を行って欲しいと願っていただろう。

やがて鬼になる自分の代わりに、霞柱として君臨するように。

どんなに辛い思いをしたのだろうか。突き放したくなかっただろう。優しくて繊細なお前だから。

そんな仕打ちをした挙句、自分は鬼殺隊を裏切って鬼となった。
…会えないと言うには十分すぎる。

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