第73章 どしゃ降りの雨
期末試験最終日。
天気は最悪。土砂降りだった。どうも台風が近くに来ているみたいだったが、大雨が続くくらいで特に影響もなく試験は進められていた。
「台風でテストなくなれー!!」
「本当それ!」
生徒はそう言いながら試験を受ける。
俺は今日も試験官をして、カンニングする奴もいなくて無事に終わった。
最後の試験が終わると、生徒たちは歓喜して家路を急いだ。教員はこれから地獄の採点が待っているので憂鬱だが。
まあ試験の返却して成績さえ出しちまえばもう夏休みに入るし……。
職員室に戻ってテストの答案を担当教師に渡す。俺はそのまま自分の席に戻ろうとした。
「不死川先生。」
声をかけられて立ち止まった。
振り向くと胡蝶がいた。
「すみません、ちょっと身長お借りできますか?」
そう言われて、指を刺す方向には女性教師たちが集まっていた。
何だと思うと棚の上のものが取れないみたいで、俺は言われたものを取ってやった。
「ああ、よかった」
「ありがとうございます、宇髄先生も悲鳴嶼先生もいらっしゃらなくて」
みんな口々に礼を言う。
まあ、あの二人の次に大きいのは俺か。伊黒が遠くから睨んできてるのは気づかないふりをしよう。
「それ、何に使うんですか?」
俺が取ったのは何かの箱だった。
「将棋のコマですよ。」
パカっと蓋が開けば、綺麗な将棋のコマがそこにあった。
「将棋部の子たちに新しいものが欲しいと言われて部費で購入したんですけど、届いてることに気づかなくって。」
「ああ、確か顧問をされてるんでしたね。」
「そうなのよお。」
大先輩の年配の女性教師がニコニコ笑う。
優しくておっとりしていて、周りからの評判もいい人だ。
「誰かがあそこにしまってくれたのね。」
あの高さなら明らか宇髄だ。仕舞い込んだなら報告しろ。
「試験も終わって今日から部活始まるし、届けたくって。」
そう言って先生が笑って去っていく。
将棋部……。
霞守は今日部活に行くんだろうか。