第71章 青色二つ
病室に入り寝顔を覗き込むと、今日も穏やかに眠っていた。最近は笑うこともうなされることもなくなった。
「、来たわよ。久しぶりね。」
胡蝶が話しかける。しかし反応はなく、俺はその様子を眺めていた。
「…一ヶ月が過ぎたのね。信じられないわ。もうすぐで二ヶ月じゃない。」
独り言のような、話しかけてるような口調で言った。
花を花瓶に生ける仕草が綺麗で、さすがは華道部の顧問なだけあると感心していた。
「あら、あのガーベラは悲鳴嶼さんのね?」
「あァ。」
「その隣のお守りは…。」
「霞守の妹からだ。わざわざくれたんだよ。」
「そう、良い子なのね。」
胡蝶ときっと顔を見れば驚くだろう。仕草も振る舞いも、本当に似ているから。
「何だか、今にも目覚めそうなのに…。起きないのね。本当に不思議だわ。」
「そうだなァ。」
は穏やかに寝息をたてていた。
ふと、霞守の…先程の不穏な言葉を思い出した。
「……そういえばこの前…」
胡蝶が何か話そうとした時、の指先がピクリと動いた。
「!?」
俺が驚いて詰め寄ると、胡蝶もそうした。見ていたらしい。
「!?ッ!!!」
胡蝶が名前を呼ぶ。
穏やかに寝ていたのに、突然苦しそうに顔が歪んだ。汗も吹き出してだらだらと流れている。
「不死川くん!!!」
俺は慌ててナースコールを押した。
いつものうなされているのとは様子がまるで違った。
声も出さずにぎゅっと唇を閉じたまま、苦しそうにしていた。