第71章 青色二つ
「学校の先生だよ。あの後ろの人もそう。」
霞守がボソボソと両親に説明する。
「こんにちは。息子がお世話になっています。」
父親はあの神社の神主だ。きている服も上等で、身なりもきちんとしていた。一方で霞守は相変わらず見た目が悪い。
「先生同士でお付き合いしてるの?」
突然間延びした声がした。
小柄な女の人…霞守の母親だろう。そのことに胡蝶は驚いたようで固まっていた。
「気にしなくていいです。いつものことだから。母さん空気読めないんで。」
霞守がやつれた顔で言った。
「私達は友人のお見舞いに来たのですよ。」
「……。」
それでも胡蝶が説明すると、その人はキョトンとした。
「ふうん。」
その人はふらふらと何処かへ行こうとするので、慌てて父親が俺たちに頭を下げて追いかけて行った。
「先生たち、元気?」
何の脈略もなく霞守が言い出したので俺は両親から視線を戻した。
「……元気だけど…?」
「…あァ。」
「そっか。いいね。」
何だか様子がおかしかった。
けれど、違和感の正体に気づけない。
「……霞守くん。お父さんたちのところに行かなくていいの?」
「いや。母さんが妹とけんかしちゃって、頭冷やすために外に出ただけなんで、俺妹のとこにいてあげなきゃ。またね。胡蝶先生、不死川先生。」
霞守はそう言ってそのまま病室に戻った。
「…やっぱり不思議な子。……大丈夫なのかしら。」
「……どうだろうな。」
「妹がいたのね。まさか同じ病院に入院してるなんてびっくりだわ。あなた知ってたの?」
「まあな。でもプライベートなことなんだから別にいいだろ。」
胡蝶が病室のプレートに目を向けた。
“霞守阿国”とそこには書かれていた。
「……霞守くんにのこと話したの?何だか知っているみたいだったけど。」
「なんか、アイツが元々のこと知ってたんだよ。もしかしたら遠い親戚とかかもしれねえなァって思ってるんだ。霧雨の家のことは詳しく知らねえから。」
「…そう。」
胡蝶はしばらくその病室の前にいたが、すぐにまた歩き出した。