第71章 青色二つ
途中でじいさんたちを呼んだ。
やはり原因がわからない。は大量の汗を流して苦しそうにしている。呼吸が不安定だと人工呼吸器を取り付けられ、一気に緊張感が増した。
胡蝶がじいさんたちと話している間も俺はほとんど放心状態だった。
ただ苦しそうなその顔が、死に際の霧雨さんの顔とよく似ている気がしてならなかった。
「少し外でリラックスした方がいいんじゃない?」
ついに胡蝶にそう言われ、ほぼ強制的に病室を追い出された。
リラックスと言われてもやることなんてない。ただソワソワと病院の廊下を練り歩いた。
その道中、見慣れた後ろ姿を見た。
「霞守の…」
「兄さんの先生」
霞守阿国。
やはりアイツにそっくりだ。
「…雲行きが怪しいですね。」
「…」
そう言うが、窓の外は太陽が光っている。
「……先生って記憶の遺伝って信じますか?」
「あ?」
急すぎる話の展開に思わずそんな声を出してしまった。
霞守の妹は続ける。
「私達は伝えなくてはいけないことを伝えられなかった。だから、遺伝子が私たちに無理に思い出させようと伝えようとしているのです。」
「…何を言ってるんだ?」
「秘密を暴く頃にはお墓の下…。私達は隠しすぎてしまったのです。そうして、伝えなくてはならないことを伝えられなかった。千年にも及んで、遺伝子は叫び続けているのに。」
その瞳が激しい輝きを放っていた。
「兄さんは死んでいった人の命を一人で背負っているのです。私は我慢ならないし見ていられないのです。日に日に衰弱していく兄さんを見ているのは辛いのです。」
妹は俺の目をじっと見つめた。
「だから、このままだと兄さんの記憶の遺伝を受けたも死ぬ。」
俺はその瞳をただ見つめ返していた。
「……これから先のどこかの週の水曜日の放課後に、絶対に兄さんを部活に行かせないで。」
阿国は今にも泣きそうな顔で言った。