第71章 青色二つ
時透の存在を知った時、自然とが思い浮かんだ。
『不死川さん』
話しかけられた時、俺は何も覚えていないふりをしようとした。
しかし無視ができなかった。
『師範を探してるんです!!』
二言目にはそう言われた。その目は本気だった。
その言葉を無視できずにいた。が、俺はそのことに関しては何も言わなかった。
悲鳴嶼さんも全く同じことを聞かれたという。だが、俺と同じく何も言わなかったらしい。
『時透と彼女の関係は親密なようで微妙なのだ』
その理由を聞くとそう言われた。はっきりとしない答えだったが。俺も同じようなことを思っていた。
霧雨さんは継子である時透のことを大切には思って大事に接していたのだろうが、どうもそうではなかったらしい。
は執拗に時透を鬼殺隊として育て上げたことを気にしていた。俺も玄弥のことがあった。気持ちはわかる。
だが、あんなにも悩みこむとは思っていなかった。
時透のことを大切していた代わりに、ずっと後悔していたんだ。
二人で暮らしていたとは聞くが、どんな生活だったのだろうか。記憶のない少年と、鬼殺隊一の嫌われ者の剣士が一つ屋根の下にいたとは今でも信じられねェ。
けど少なくとも、時透にとっては生まれ変わっても会いたい相手で、今も必死に探してる。『師範を見つけたら教えてください』とも言われた。
俺は何度も聞いた。時透に会いたいかと。しかし、アイツから良い返事は返ってこなかった。
だから時透に何言われても無視してくれと旧知の奴には言ってある。は自分のいないところで、前世も何も関係なく時透が暮らすことをきっと望んでる。
けど、忘れられないから悩んだり苦しくなったりしちまうんだ。
『私は鬼殺隊を裏切った。合わせる顔なんてないよ。』
はそうも言った。鬼になったからだ。だが、それは目的があったから。
俺は鬼になってからのことも聞きたかったが、教えてくれなかった。最後、どうやって死んだのかも俺は知らない。