第70章 所有者
「兄さんもたまにしか来れないから、お花がずっと咲いてると嬉しいです!」
ニコニコと笑う妹は、とても無邪気だった。
俺がブリザードフラワーを渡すと大喜びで、ニコニコと笑っていた。
「兄さん、見て、綺麗!!私こんなものがあるなんて知らなかった!!」
「うん。綺麗なのはわかったから、あまり興奮するなよ。また苦しくなっちゃうぞ。」
霞守は微笑んで、妹の頭を撫でた。
妹はにっこりと笑って嬉しそうにしていた。
興奮して疲れたのか妹は眠そうにうとうととしだした。必死に我慢しているようで、仕切りに目を擦っている。
「寝ていいぞ。」
「折角兄さんたち来てくれたのに、寝たくない。」
「ほら、もういいから。」
突然、霞守の声が低くなった。
……俺の職場の、学園長とトーンが似ている気がした。
あの声を聞くと、どんな奴でも丸くなっていうことを聞いてしまう。そんな不思議な声だ。
すると妹は目を閉じて、程よいテンポで寝息をたて始めた。
「……お前、本当にいい兄貴だなァ。」
その様子を見て思わず言ってしまった。俺も一応兄貴という立場だが、こんなに優しく接してやることはできていない。
「いいえ。」
霞守は変わらぬ声のトーンでゆっくりと話した。
「俺は、最低な人間です。」
そう言うので、思わず言葉を止めてしまった。
「せんせ、気付いてると思うけど、俺物心つく頃にはもうおかしかったんです。」
霞守は妹の顔を見下ろしながら話し始めた。
「人や植物の心の声が聞こえたり、音が色になって見えたり、これから起こることがわかったりするんです。」
霞守のいうことは信じ難かった。しかし、普段の様子を見ているとその通りでないと到底説明ができなかった。