第69章 たかだか人間
昼休み中に職員室で飯を食っていると、隣のデスクの煉獄が話しかけてきた。
「いや、今日も霞守少年は凄かったな。」
その名前に俺は反応してしまった。
中等部から上がってくるときに、すごい奴がいると噂にはなっていたが職員室じゃすっかり話の種になっている。話に出てこない日がないくらいだ。
「何だよ?」
「聞いてくれるか、不死川先生!!」
いや、聞くから声を落とせ。
「それがな、今日は平安時代の範囲をやったんだが、彼はすごく平安の文化に興味があるのか博識でな。授業中に色々と教えてくれた。俺より物知りだ。これはいかんな!勉強せねばなるまい!!」」
「へえ、意外だな。日本史が得意なのか。」
「うむ、どうやらそのようだ。しかし彼の場合試験は満点に近いからな!得意不得意はないのかもしれないが!!」
「いや。見てる限り理系は苦手だ。ありゃひどい。さっきも質問にきたんだが、理解も遅いし公式の使い方もいまいちわかってなかったぞ。」
そう言うと煉獄は首を傾げた。
「意外だな?中間では数学も満点だっただろう?」
「…そうだな。まあ、勉強してるんだろう。よく質問にくるし。」
「はは!そうかそうか!勉強熱心な生徒はいいな!!こちらもやる気が出る!!」
確かに、アイツははたから見たらいい生徒だ。
でも、少し引っかかった。
高校時代にがもらしていた言葉を思い出した。
『テスト中でも他人の感情が伝わってくるから、答えモロバレなんだよー。』
『春風さんなんて、何の問題出てくるか伝わってきちゃうらしいよ。』
『だから誰よりも早く問題とかないと試験にならないの。』
いつだったか、やけにやつれた顔で言ってきた。
まさか、霞守も…。
『はは、多分、その人より鮮明に読むことができるよ。』
……まさか、な。