第69章 たかだか人間
午前最後の授業が霞守のクラスだった。
アイツは相変わらずやる気がなさそうにしながらもしっかりと授業を聞いていた。
授業が終わると、皆がわらわらと去って行く中、霞守は俺のところにやってきた。
「せんせー。さっきの全然わかんねんだけど…。」
「あ?最後のか?」
「んー…。」
霞守はボサボサの頭を掻き毟った。
珍しいことじゃない。コイツはよく質問に来る。成績上位…というか学年一位の成績を維持しているくせに、発展的な難しい問題はもちろん、比較的簡単な基礎問題まで質問に来るから驚きだ。
質問に答えて教えてやると、いつも一度では理解することができない。わからないと三回ほど俺の説明を聞き直してようやく納得して帰って行く。
…その様子を見ていると、どうしても成績上位者には思えない。理解も遅いし、途中式もめちゃくちゃだ。けれど、試験やテストなんかになると完璧に答えてくる。
このことは胡蝶や伊黒なんかも引っかかっているようで、俺も不思議に思う。
「霞守くん、熱心ですね。」
俺が片付けていると今日このクラスの日直である竈門炭治郎が話しかけてきた。俺が黒板に書いた文字を丁寧に消していた。
「次の試験も一位ですかねえ。俺たちいつも予想してるんですよ。」
「予想してる暇あったら、勉強しやがれ。わかんなかったら聞きに来い。」
「…頑張ります。」
俺はさっさと教室を後にした。