第68章 変わった生徒
自分の部屋に戻って、そのノートを開いた。
勝手に読んでいいものかわからないが、俺はそのノートを開いた。
『今日は前世の夢を見た。黒死牟と戦った。黒死牟は、何度も私にオクニと叫んでいた。誰だろう。』
……?何だこれ。
そもそも夢日記って何なんだ。夢に見たことを書き溜めてんのか?何でこんなことしてんだ?
『今日は恐ろしい夢だった。師範という人が出てきて、誰かの首を斬り落としていた。血生臭くて、怖かった。実弥を起こしてしまって申し訳なかった。』
次のページには俺のことが書いてあった。
……そう言えば、いつごろかやたらと夜中に飛び起きていることがあった。…まさか。
まさか、その時のか?
変な夢を見ていて、そのせいで夜中に頻繁に起きていたのか…?
俺は読み進めた。丁寧に日付まで書かれていたので、俺はだんだん思い出していった。
例えば、この日。
『阿国の顔が見えた。誰かが水桶をくれた。その水面に、阿国の顔が映った。私にそっくりだった。とても不気味で嫌な夢だった。』
そう書かれていた。阿国というのが誰なのかよくわからないが、どうもは夢の中でその阿国という女の子になっているらしい。…何とも奇妙な夢だ。
この日のことはよく覚えてる。夜中に呻き声がきこえて、俺は飛び起きた。それがアイツの声だとわかって、慌てて明かりの付いている洗面台に向かった。
アイツは何やらブルブル震えていたので、その背中に手を伸ばしたら思いっきり殴りかかってきたので、慌てて受け止めた。
その日のことだった。そんなことがあったとは知らなかった。
何か様子がおかしいのはわかっていたが、特に気にすることはなかった。
最後に見た夢は、夢の中で何かおかしなものを食べたというだけだった。
なんてことはない。いや、確かに変わった夢だが。
…ああ、何だか腹が減った。飯作らねえとな。
「にゃあ」
おはぎが足元にいた。
「お前が俺のとこに来るの、腹減った時だけじゃねえかバカタレ。」
おはぎは調子良くすり寄ってくる。これが可愛くて、俺はついころっと今までの素っ気無い態度を許しちまう。
『実弥はおはぎが大好きだねえ。』
アイツの調子の良い声が聞こえてきそうだが、当たり前のように何にも聞こえてこなかった。