第68章 変わった生徒
そろそろ寝ようかというときに、実家から電話があった。
この時間帯ならどう考えても母親だろう。
「もしもし?」
『もしもし、夜中にごめんねえ。』
やはり母親だった。
少しなまりのある人だが、それを表に出さないので普段は違和感もなく標準的に話している。
『実弥、明日泊まって行かない?』
「…なんかあんのかァ?」
『明日から皆、海に出かけるのよ。ほら、毎年行ってるサマーキャンプ。』
そう言われて俺はああ、と納得した。俺も小学校の行事だ。外にテント張ったり、カレー食ったり、海で泳いだりして楽しかった。学年関係なく生かされるので、実家のチビたちは出払ってしまうのだろう。
『他の子もね友達の家にお泊りに行ったりするし、玄弥も部活で夜遅いし、たまには母さんご飯作ってあげるから帰っておいで。』
「……そうだなァ。」
ここしばらく帰っていない。弟や妹たちにもずっと会っていなかった。
『あと、おはぎちゃんに会いたいな。話しか聞いてないから。』
「どうだかなあ。コイツ、引っ掻くかもしれないぜ。」
『いいわよ。実弥にそっくりなんでしょ?会ってみたいわ。』
「じゃあ連れて行くわ。明日、仕事が終わってからだから…まあ部活してる玄弥よりかは早いかもしれねえけど。」
『うん、待ってるから、焦らないでね。』
母親は優しくそう言った。
おはぎが不思議そうに携帯片手に話す俺を見上げていた。