第68章 変わった生徒
その日、帰ってからおはぎに餌をやろうと思ったら姿が見えなかったので、の部屋に向かった。
部屋のドアさえ閉めとけばいいのに、閉めないのはおはぎが部屋のドアを開けろ開けろと引っ掻くからだ。傷がついたら大変なのでもうずっと開け放してある。
「おはぎ」
俺をチラリとも見ないでありつの作業机の上でじっとしている。
「なあ、頼むよ。」
俺だって寂しい。信じたいよ。今でも思うけどよ。
この部屋で待ってたら、アイツが来て、何かうるさいことを一口二口話して、笑って、抱きしめて、くっついて、それで朝が明けるまで眠りたい。
「……俺だって、もう辛くて辛くて仕方ねえンだ。」
何度病院に行っても、救われても、家に帰るとアイツがいない。
それがダメなんだ。きっとそうだ。がどこにもいない。
「にゃあ」
おはぎが鳴く。そして、ぴょんと本棚に飛び乗った。そこにはアイツが集めてた画集とか、お気に入りの漫画とか、学生時代のスケッチブックとかが並べられていた。
「おはぎ、そこに乗ったら危ねえって言われてただろ。」
「にゃあああああ」
「だから、アイツは怒りに来ねえから…!!」
俺がおろそうとする前におはぎがまた鳴いた。
…こいつ、本当に俺の言うこと聞きやしねえ。
「…あ?」
おはぎが動かない戸棚に、見覚えのない分厚いノートがあった。
画集でも、漫画でも、スケッチブックでもない。何てことはない普通のノートだ。
変わったものばかりが並ぶ本棚にある普通のノートに、俺は目を奪われた。もうおはぎは諦めて、そのノートに手を伸ばした。
「……夢日記…?」
確かにアイツの文字で書かれたそれを見て、眉を潜めた。