第68章 変わった生徒
気が済んだら病室から出て、廊下を歩いた。
顔を見たらちょっとは心が晴れるのだが、今日はどうもダメだった。
「おい、ぶつかるぞ。」
「ええ?何で?誰もいないじゃん。」
曲がり角で、そんな会話が聞こえたかと思えば、どんとぶつかられた。
しかし大した衝撃ではなく、そこにいたのは女の子だった。
ここに入院しているのかパジャマ姿だった。見たところ、中学生くらいか。俺より背が低いので、顔が見えなかった。
「いて」
その子はそんな声をあげた。
「悪い、大丈夫かァ。」
少し屈んで顔を覗き込んだ時、俺は目を見開いた。
「……いたあい…」
うるうると目に涙を溜めていた。
その目は大きく、幼い顔立ちだった。
しかし、スラリとした鼻。ふっくらとした唇。紅潮した頬。線の細い体。白い手足。
この泣き顔、声、姿形。
そっくりだった。
中学時代のアイツと瓜二つだった。
「こら、お前が曲がり角なのにズンズン進んだからだろ。それに俺はぶつかるって言った。」
そして、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて、これまた見覚えのある顔が見えた。
「ね、せんせ。聞こえてたでしょ?」
霞守はにこりと笑って、俺に問いかけた。