第67章 霞を守る者
そんな仕事の帰り道。
病院は遠いし、面会時間にはどうにも間に合わないので今日も会いに行けなかった。
俺は最近必ず神社に寄るようになっていた。
真夜中の神社には人がいない。
俺は駐車場に車を停めて、鳥居をくぐる。鳥居の下でとまった。中学生の頃が思い出された。
あの日、俺は馬鹿みたいに上がってて、どこて待ってるとか、何時に来るとか伝えていなかった。だから朝早くからこの鳥居の下に立っていた。
何時間たっても幼なじみの姿が見えなかった。正午を過ぎて、もう腹を減って諦めて帰ろうとした時に、幻のようなものを見た。
見覚えのある隊服が見えた。その人は、変わらぬ微笑みを浮かべていた。とある一点を指差すので、そこに目を向けた。
鳥居の反対側の柱の下で、アイツがぜえぜえ息を切らしてキョロキョロしているのが見えた。
思わず視線を戻すと、そこには何もなかった。
霧雨さんが教えてくれた。あのあと、俺はアイツから気持ちを伝えられて、照れくさくて嬉しくて何も言えなかったのが今でも悔やまれる。ありゃ情けなかったなァ…。
再び歩を進めて参道を歩いた。広い神社だから、社は複数あるが一番大きな本殿まで数分かけて歩いた。
合格祈願に来たりしていたが、ここは主に医者の神様がいるとかで、病気や怪我なんかを理由に来る人が多い。
は病気なのか、それさえわからない状況だが。
今の俺にはもってこいだ。一度心臓が止まったかと思えばまた動き出し、今度は目覚めない。
ずっと側にいてやりたかった。けど、仕事を優先した。休めなかったし会議もあった。行けなかった。
けど仕事も会議もアイツと比べるまでもないンだ。アイツが何より大切だから大事だから。
俺は賽銭を投げ入れて鈴をならし、作法に沿って祈った。
(が、目を覚ましますように。)
長いこと目を閉じていた。しばらくして目を開けて、ため息をついた。
今は夏真っ盛りだ。が寝ている間に露は終わってしまった。
………今年の夏は、どこに行こうとかけっこう考えてたんだけどな。