第67章 霞を守る者
今日でが目を覚まさなくなって一ヶ月目だ。
本当なら毎日会いに行きたい。が、俺も高校の数学教師としての仕事がある。教師の仕事というのは休みにくい。まとまって有給も取りにくい。
どんなに頑張って家に帰ったところで、おかえりと言ってくれたり、疲れも吹き飛ぶくらいの笑顔で出迎えてくれる奴がいない。
だが仕事に私情は持ちこまねェ。やるときはやる。
授業も予定通り進んでいる。この前ぶん投げてやった奴もしっかりやっているし。
『数学なんて将来使わねーし!』
高等部一年生にしてそう俺の前で叫んだ度胸は認めてやる。
ただ、不思議な奴だった。窓の外にぶん投げちまったとき、ああやりすぎたなと反省したが、そいつは窓の減りをがっと掴んで、ヘラヘラ笑っていた。
『あはは、スマ●ラみたい。』
ブラン、と窓の外にぶら下がったそいつのおかげで、俺は命拾いをした。危なかった。もう鬼殺隊でも何でもないのに、かっとなるとどうも本気でやっちまう。
そいつはその時のことを何とも思っていないみたいで、一応謝ったがやはりヘラヘラしてこう言っていた。
『まあ、俺も変なこと言ってすまんかったです。』
はっきり言って変な奴だ。
髪の毛は伸び放題でボサボサ、制服のシャツはいつもヨレヨレで、セーターは毛玉が目立つ。家が貧乏なわけではない。そいつの家は俺とも初詣とか合格祈願に行っていた神社で、貧乏どころか大金持ちのはずだった。
それなのに雑で適当で見た目がよくない。冨岡がよく叱り付けているが直そうとする気配がない。それでも多めに見られているのは、すこぶる成績がいいからだろうか。中等部からそうらしいが、学年一位の成績を維持している。