第64章 大正“悲劇”ー終ー
「お前を殺したのは鬼殺隊だ。」
今にも失神しようとする私に黒死牟が告げる。
「師に恵まれれば怪我の治療がされればもっと生きられた命だ。お前を見捨てたのは鬼殺隊だ。お前はもっと強くなるはずの人間だった。これではどちらが鬼か分からぬ。」
私は目を見開いた。
ぐっと残された手足に力を入れる。
「何だって?」
私が立ち上がると黒死牟が驚いていた。
「お前が」
ギュッと刀を握りしめ、片足で深く構えた。まるで欠損した手足が戻ってきたように思えた。
「お前が鬼殺隊を愚弄するなああああああああ!!!!!!」
信じられないほどの咆哮に、あたりが震撼するのがわかった。
この目を確かに奴に向けた。
「鬼殺隊は立ち向かっている!何百年もだっ!お前たちが何もかもを奪うから!今の言葉を取り消せクソ野郎ーーー!!!」
手と足は一本ずつないし、肺は片方潰れた。肋骨がぐちゃぐちゃだ。残された足の骨にはヒビが入ってる。目ももうほとんど見えない。耳だって。
叫ぶうちに、目から血が流れた。
怒りに燃える私はもう目の前が真っ赤に染まった。
「なぜ元鬼殺隊のお前がそんなことを言えるんだ」
口から血の塊が吹き出る。
「なぜだ」
訳もわからぬうちに刀を振り上げていた。
「…もう…もう死ね、阿国…。」
黒死牟は放心したように立ち尽くしていた。
「なぜ致命傷を負ってお前は生き続けたのだ。なぜお前の血は絶えない。頼む阿国。もう終わってほしい。お前はなぜ私を苦しめるのだ。」
再び咆哮をあげる。
「……私は…お前を殺すことができない……」
もはや黒死牟が何を話しているのかも聞き取れなかった。
目の前に見える奴を倒さなくては。
それしか。
殺意しか。
『だめ。』
その時、声がした。……優鈴?
『もういいよ。終わりにしよう、帰ろう。ねえ?』
私は固まった。
『それ以上怒ると君が君でなくなるよ。』
夢か幻か、ボロボロと泣きながら優鈴が振り上げる私の手をおさえていた。
『』
その時、ヒビの入った足の骨がついに限界を迎えてきしみながら折れた。私は地面に膝をついた。
それでも刀を奴に向け続けた。
『良いよ、もうこっちにおいで…』
それから、立ち上がることはなかった。