第63章 大正“悲劇”ー始ー
はじめてあった時よりも確かに声が変わったのがわかる。ほんの少しの間だが、目の前の子供は男の子として成長している。
「声変わりですかね。」
「…かもしれません。」
「じゃあ、明日はそのお祝いもしましょうか。」
私は明日のことを考えた。お祝いが大根というのは少し寂しい気がするので、何かおいしいもの…。甘い物が良いでしょうか。いや、育ち盛りだから栄養の多い物が良いでしょうね。
「この調子だと、身長も伸びて私より大きくなるかもしれません。体が大きいのは良いですよ。悲鳴嶼くんは大きすぎて不便そうですし、宇髄くんぐらいを目座して………。」
「誰ですかその人たち。」
「……。」
冷ややかな風がふきぬけた気がしました。
まあ、仕方のないことです。私もずいぶんと慣れました。
「…怒ってますか?」
無一郎くんが恐る恐る聞いてくるので、私は首を横に振りました。
「いいえ。」
安心したようなので、私はにこりと笑いました。
「無一郎くん、ここからですよ。頑張りましょうね。」
「…はい、師範。」
いつものように頷いて言う。
「…ここからです。本当に、ここから。君はここからです。」
もうすぐ終わる私とは違って、無一郎くんはここから。
新しい次世代は、やはり何もない瞳で私を見つめていました。