第63章 大正“悲劇”ー始ー
「じゃあ、僕は師範が愛しいんだと思います」
突然言われて、驚きました。
私は彼から伝わる感情で確かにそれを感じました。
「…師範といると……カヤを抱っこしてるときと同じような気持ち、です…少し違うかもしれないけど。」
少し迷ったような、あまり理解ができていないような様子が少し儚げでした。
「……君も、そんなことを言うようになったのですね。」
「?」
「重要なのは、言葉ではなく、気持ちです。わからなくとも、良いのです。」
私は微笑みました。
「言葉はわからくても、いつかあなたは心で理解する日がくるのです。大丈夫。」
「はい、師範。」
無一郎くんはカヤをようやく地面におろしました。自由になったカヤは、さっさと行ってしまいました。