第62章 大正“幕引”ー終ー
私と宇髄くんで奮闘するも、どうやってもあちらのほうが上だ。
「何であんなに強いんだよ」
宇髄くんが肩で息をする。
「人員不足が拍車をかけていた時代でしたからね。当時の柱は四人でした。」
「…それで一人一人が強いのか。」
正確に言うと五人なのだが、槇寿郎殿が引きこもりがちになってしまったから四人だ。
「優鈴まで復活してはたまりません。無一郎くんが間に合えばいいのですが。」
「はあ!?継子に行かせてるのかよ!?あんな血鬼術使う奴、無理だろ!!」
「落ち着きなさい。そしてよく見てください。」
私たちが話しているうちに向こうが攻めてくる。
「水の呼吸、玖ノ型」
「雷の呼吸、弐ノ型」
私たちは構えた。
「霞の呼吸、弐ノ型」
「音の呼吸、壱の型」
水流飛沫・乱、稲魂、八重霞、轟。
四つの攻撃がまざりあう。
私は防げたが、宇髄くんは小柄で小回りのきく桜くんの刃を避け切れていなかった。
とっさに左腕を伸ばした。
「わあ」
「うおっ!!」
宇髄くんの眼前に向けられていた刀をぐっと掴む。
素手なのでもちろん切れるし痛い。
「君は相変わらず攻撃できる機会を見逃しませんね。」
「どうも。鬼狩りを殺せなんて命令でてなかったら、もっと他のことしてあげたいんだけどね。折角蘇ったんだし。」
刀から手を離し、すっと離れる。
ここは港。海。今は船の上だ。水上での戦闘なんて初体験だし、宇髄くんも私もうまく動けない。安城殿は素早く動いて空中線にことを運んでくるし、桜くんは水の呼吸の使い手。揺れる船の上でも足捌きに隙がない。
それにさっきから何度か陸に行こうとしているのに全部妨害されている。大きな船が停泊しているわけではないので、ここにある船から船へと移動することでしか足場の確保ができない。
「霧雨さん!俺に構うな!!あんた、さっきから怪我してばっかじゃねえか!!」
「うるさい!!さっきからぎゃあぎゃあやかましい!!!守られてろッ!!」
「ええ!?ド派手に今日一番の衝撃なんですけど!?」
私は呼吸を整え、痛む手で刀を握り締めた。