第62章 大正“幕引”ー終ー
「おら下ろすぞ!!しっかりしろや霧雨さん!!」
宇髄くんが安城殿に向かう。
「いけません!!安城殿は速いのです!!」
私は慌てて叫んで走り出した。安城殿は宇髄くんが刀を振り下ろす前にその懐に潜り込んでいた。
私はさらにその下に潜って大きく斬り上げた。
安城殿の頬にかする。
続いて責める。
「垂天とお…」
その瞬間、何者かが安城殿の前に躍り出た。
「雫波紋突き」
私は咄嗟に宇髄くんを蹴っ飛ばした。
非力な私の力ではよろめかせるぐらいが精一杯だったが、それでも彼には当たらなかった。
七発もろに食らった。
倒れてたまるかとふんばる。
ボタボタッ、と血が垂れた。
「霧雨さんッ!?」
「宇髄くんかまえて!!」
私はぐっと力を込めて前進した。
「生成流転」
「遠雷」
ああ最悪の二人が揃った。
「月の霞消!!!」
全て薙ぎ払う。
が、ガクンと膝が折れて地面についた。
「……ッ霧雨さん!!」
宇髄くんが駆け寄る。
「あんた…ッ!!」
出血は腹部、胸部、左足…。
計13箇所。
「大丈夫。止血は終わりました。すみません宇髄くん君が無事で良かった。」
「…ッ。先代の水柱ですか。」
「ええ。」
宇髄くんは新たに現れた一人を睨みつけた。
彼は知らないはずだ。目の前の小柄で華奢な男の子がどれほどの力を持っているか。
「久しぶりだね。」
桜くんはそう言う。
「…そうですね。ずいぶんと。」
「死んでから何年経ったのかな。まあ知りたくもないや。」
私も、数えていないので答えられない。
「いいや。本気でいくからね。多分そのうち木谷さん来るから気をつけてね。」
桜くんはそう言うや否や、すぐに地面を蹴った。
宇髄くんめがけて突進する。
「!?おい!!あんた元柱だろ!?何で襲ってきやがる!!」
「体の自由が効きにくいんだ…っ、ほら、もう頭痛くて仕方ないよ。」
少し顔を歪める彼の額から、傷があるわけでもないのにダラリと真っ赤な血が流れた。