第62章 大正“幕引”ー終ー
鬼の気配ではない。
正真正銘、安城殿の気配がする。
「……あなたが来たの。なるほど、得策ね。」
しかし、安城殿であって安城殿でないことはわかった。
「いいこと?体の自由がそうそう聞かないから話せるうちに説明するわ。聞きなさい。」
ガラスが今回の件について説明してくれたのを思い出した。
『雷姉貴の墓が荒らされていた。骨がごっそり持ってかれたんだとよ。今回の件と関係してるのかもしれん。』
まるで走馬灯のようにそれは思い出された。
「私は鬼に作られた人形よ。鬼は血鬼術で柱の私を完全に作り上げた。私だけじゃなく、恐らく他の柱でも同じことをしているはずよ。」
「……では、あなたは…」
「骨に残った記憶…だそうよ。今ここにいるのは過去の私。…本当の私は行くところに行ったもの。鬼の頚を斬らない限り私は動き続ける。鬼は強くないわ。血鬼術以外は弱い。きっと斬れる。」
安城殿が頬をひきつらせる。顔に血管が浮かび始める。
「…ッ、ごめんなさい、もう、限界だわ、情けないわね、全く。」
ドロッと安城殿の目から真っ赤な涙が流れた。血だ。
「無一郎くん!!」
私は後ろに叫んだ。
「鬼を探して頚を斬るのです!!私はここで闘います!!」
「わかりました」
無一郎くんは走り出した。
どこにいるかはわからない。気配を探って教えてあげたいけど、ダメだ。そんな暇はない。
「霹靂一閃」
させない。
左手でガッと刀の柄をおさえて、構えを乱す。
「垂天遠霞ッ!!!」
完璧に決まったのに、安城殿は難なく避けた。ああくそっ、やっぱり、速い。
「弐ノ型、稲魂」
「ッ!!!」
それに一撃が重い。体の大きな人だ体格に恵まれている。それに加えてあの俊足。初速が見えない。目で追えない。感じて見極めるしかない。