第62章 大正“幕引”ー終ー
「本当にもう良いのですか?」
その日の夕方には私と共に任務へ向かっていた。
安城殿の目撃証言があったところまでガラスに案内してもらい、無事にたどりついた。
そこは海の近くで、港だった。
潮風が体に毒ではないだろうか。
「…大丈夫、です。……師範に置いていかれたくないので…。」
ぎゅううと私の隊服をつかんでくる。
何となくわかってきたけど、彼随分と甘えたなところがある。でも仕方ないのかもしれない。まだ幼い子供だ。
その右頬は少し腫れていた。私が殴ってしまった。
「………痛い?」
そこを撫でてやると、首を横に振った。
「…ごめんなさい、僕が言うこと聞かなかったから師範が怪我を。」
彼を庇った際に怪我をした私の右腕はまだ完治しておらず、包帯が巻かれていた。
「いいえ。上官の言いつけを守ることさえわかってくれたら、私はそれで良いのです。…それで、道中話しましたが…今回の敵は、とても強者です。」
「はい。」
「では、行きましょう。」
私達は港に足を踏み入れた。
ある場所まで来ると、ぶわっと圧がかかった。隣で無一郎くんが立ち止まる。
彼も感じたらしい。
「無一郎くん後ろに飛んでッ!!!」
私は即座に抜刀し、刀を振った。無一郎くんは言い付け通りにちゃんと下がった。
「霞の呼吸」
「雷の呼吸」
あぁ。
落雷のような、破壊音。
刀が交わる。
私は吹き飛ばされそうになるのを必死で踏ん張った。
「師範ッ!!!」
私はその姿を見てぎゅっと刀を握りしめた。
「あん……じょ…ぅ…どの……」
目の前の美しい人は、にっこりと微笑んだ。