第61章 大正“幕引”ー中ー
そうして私の屋敷に戻った頃にはもうお昼時は過ぎていた。途中で弁当屋で上等なお重を買ったので、これで許してもらおう。
さすがに起きているだろうし、あの子お腹を空かせているだろうから。
私が屋敷の門の前まで来ると、烏が二羽屋敷から飛んできた。
「まあ、銀子にガラス。そうそう、あなた達にも美味しいものを…。」
「ギャアーーーーーッ!!助ケテ!!助ケテエエェ!!」
「おい!!!まずいぞ!!!小僧がなんか変だ!!あとこの雌烏を黙らせろッ!!!!!!」
「いて、いててててて」
二匹揃ってつついてくるので私は参ってしまった。二人に言われるがまま屋敷に入った。
勝手場の台にお重を置いた時、私はそれを聞いた。
「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」
「ッ!?」
思わず耳を塞いだ。
それを聞いてまた烏たちが騒ぎ出す。
「ほら!!目覚めてからずっとこうだ!!もう頭がどうにかなっちまうよお!!」
「助ケテエ!!助ケテエエェ!!アノ子ヲ助ケテヨッオ願イヨオ!!」
ガラスと銀子がそういうので、私は慌てて無一郎くんの元へ向かった。
「あああああ、あっ、ああぁあぁぁぁ…ッ!!」
部屋に転がるように入ると、無一郎くんは頭を抱えて布団の上でのたうちまわっていた。
「無一郎くん!!」
私が駆け寄り手を伸ばすと、彼はそれに構わず呻き声を上げ続けた。
「どうしましたか、ああ、頭が痛いのですか!?」
「ううぅ、し、しは、ん」
無一郎くんはまたいっそう大きな悲鳴をあげた。
「あ。あ、ああ。お、お医者様。お医者様のところに…。」
私はぎゅっと無一郎くんを抱きしめた。
無一郎くんは私の腕の中で暴れて騒ぎ立て続けた。