第61章 大正“幕引”ー中ー
「美しい顔立ちの人で、綺麗な長髪が特徴的です。男性ですが、女性的な立ち振る舞いをされる方でした。」
私は淡々と語る。鮮明に顔が思い浮かぶ。
「天晴が姿を現すと必ず何かの被害が出る。」
お館様が語る。
「これ以上被害を出したくないが、どうやら誰も敵わないらしい。天晴は柱でとても強い子だったからね。もし、強さまで忠実に蘇っているのなら、下の子たちではどうにもならない。
そこで、君たちにお願いしたい。」
私はぎゅっと拳を握りしめた。
「私が。」
声を発した。
「私が行きます。安城殿に何かあるのなら、私に行く責任があります。」
「……そうか。」
お館様は、少しゆっくりと答えた。
「では、しばらくはの担当地区は天元に任せてもいいかな。」
「は、お任せください!」
「、君は剣士の中で一番強い。だから信じているよ。」
お館様は優しくおっしゃった。
「天晴を、眠らせてあげてほしい。」
感情の変化は見られない。けれど、切な願いに聞こえた。
私は深々と頭を下げた。
「必ずや……。」
ぐっと唇をかみしめた。
死ぬ直前、安城殿が流した涙が、頭をよぎった。