第61章 大正“幕引”ー中ー
会議の内容は普段と同じ近況報告や担当地区の情報など。滞りなく進んでいった。
そして、最後にお館様が告げられた。
「最近、いくつか妙な報告を受けている。」
私達は黙って話を聞いていた。
「死んだはずの人間を、何人かの隠が目撃している。」
「隠がですか?」
「剣士に彼を知る者はもういないからね。もちろん君たちも知らないかもしれないが…。」
しかし、急に言葉を止められた。
「いや、は知っているね。」
「…私がですか。」
「元鳴柱、安城天晴。近頃、彼の目撃情報が寄せられている。」
とん、と音がする。
自分がいつの間にか立ち上がってお館様に詰め寄っていた。その音だ。
私は反射的に動いていた。
「生きていらっしゃるのですか!?」
私は自分でも驚くほどの大声を発していた。
「安城殿は、生きていらっしゃるのですか!!」
「」
「お会いできますでしょうか、安城殿は」
ぱあん、と何かが弾けるような音がした。
振り返ると行冥が手を打っていた。
「……座れ…そのように取り乱すな」
私はハッとして、慌てて元の場所に戻った。
「うん、いきなりごめんね。驚かせてしまったよね。」
お館様はにこり微笑まれた。
そうだ。落ち着け。落ち着かないと。
「目撃情報はあれど、天晴は死んだ。死体は私もこの目で見ている。あのような状態で生きていられるとはとても思えない。」
「鬼の仕業ですか…。」
「恐らくはね。」
ああそうだ。生きているはずがない。私のすぐ側であの方は亡くなった。
けれど。
安城殿だって私と同じく桜くんの薬を飲んだうちの一人。
もしかしたら、もしかしたら…。でもそんな話は聞いてない。天晴先輩は、何も…。
「霧雨さん」
とん、と背中を叩かれて私はハッとして顔をあげた。皆が私を見ていた。私を呼んだのはしのぶだ。
「その安城天晴と言う人は、どのような人なのですか?」
私は慌てて話に集中した。