第61章 大正“幕引”ー中ー
一晩にして無一郎くんは偉大な功績を叩き出した。斬った鬼は、どうやら元下弦。
階級が上がるのも早そうだ。
「で?継子は無傷なのにあんただけそんなことになってんですか?」
宇髄くんがニタニタと笑う。
ああやかましい。
私の右腕は包帯でグルグル巻きだった。
無一郎くんは帰ればすぐに布団に入りすやすやと眠ったので、そのままにしておいた。今日は朝から柱合会議で、私は産屋敷邸に来ていた。昨晩の報告を隠か誰かに聞いたらしく、皆にその話をされた。
「はっ、情けねエ」
不死川くんが堂々と言ってくる。
「霧雨さんのことだから誰かを庇ったのだろう!そうではないと、あなたに傷をつける鬼がいることになってしまう!!それではここにいる誰も太刀打ちできない!!」
「ああ、鬼の頚が斬れたならそれで良い…。それよりも、そろそろお館様がいらっしゃる。」
煉獄くんが擁護してくれた後、行冥のその一言で全員黙って居住まいを正した。
「お館様のおなりです。」
お嬢様方の付き添いで、ようやく姿を見せられた。
今回はしのぶが挨拶を告げた。お館様が私たちの真正面に座られる。
「おはよう、私の可愛い子供たち。朝から元気そうだね。声が聞こえてきたよ。」
私は一言も話していない。他の人たちが囃し立てて騒いでいただけだ。
「は大丈夫かな。最近はよく怪我の報告を耳にするけれど。」
「ありがとうございます。ですが、あなた様の気を煩わせるほどのものではありません。」
「そう。なら良かった。昨日はあの子の初任務だったね。頑張っていたと聞いているよ。」
「は、その通りにございます。」
「もっと近況を聞かせてほしいな。君たちのことを。」
「では後ほど。」
私が言うと、お館様はにこりと微笑まれた。
私たちを引き合わせたのはお館様。
気にかけてくださっているらしい。余計な気苦労をかけてしまって申し訳ない。