第57章 大正“浪漫”ー玖ー
霧雨家の謎が段々と暴かれつつある。
これもまた、誰かによって秘密にされたものなのだろう。
あぁ、また秘密だ。秘密ばかりだ。
「………。」
ここまでわかればもう用はない。
私は日が沈む頃にその洋館から出ようとした。
けれど、ピタリと立ち止まった。
………いる。
「へぇ」
まさかまさかだ。夜になったとたんに気配がした。
鬼の。
「この霞柱の実家で鬼が現れるなんてね」
私は隠していた刀を取り出した。
昼間姿や気配を隠すのは上手だったけど、土壇場で気配を悟られるなんて間抜けなやつ。
私は天井に刃を向けた。
助走をつけて勢いよく飛ぶ。
「霞の呼吸、壱ノ型…!!!垂天遠霞ッ!!!」
天井目掛けて突き刺す。
ボロボロの天井はすぐに割れた。
…手応えあり。
しかし鬼がするりと刀から逃げたのがわかった。私はそのまま落下し着地した。
「バレてるよッ!!!」
私はまた天井に刃を突き刺した。
しかしなかなか捕まらない。
速い…。
安城殿なら捕まえられただろうか。あぁ、そんなのどうでもいい。
もう一撃くらわせようと思っていると、天井から蔦のようなものが降りてきた。
慌てて回避したが、それは私の右肩を引き裂いた。
「……とんだお馬鹿さんではないみたいですね…」
どくどくと流れる血を呼吸で止め、私は天井を睨み付けた。
また来る。
蔦が暴れるように天井から降りてくる。
……この鬼…。他の鬼と少し気配が違う。
攻撃の手数が多い。さばくので精一杯だ。
ついでに何発か攻撃を入れているが、頚がどこかよくわからない。
(……細かく全身を斬り刻んで、頚に当たることを祈るしかありませんか。)
私は下手な鉄砲数打ちゃ当たる…そんな戦法で攻めることにした。