第53章 大正“浪漫”ー伍ー
まあ私が黙っててもお喋りなガラスが何でもかんでも話し回ってるから、私が怪我をしたこととか屋敷を襲撃されたことは行冥に伝わってたくらいだし…。
いやでも、催促しに来るなら本部には伝わってないんだろう。あぁまずいな。
「………事情は察したぜ霧雨さんよォ。色々大変なのはわかるが仕事はちゃんとしろやァ。俺はちゃんと言ったからな。」
不死川くんがくるりと背を向けた。
「あの」
私はその背中に声をかけた。“殺”の文字が今は懐かしく思える。
「……ありがとうございました。」
不死川くんは軽く手をあげただけで返事はしなかった。
「師範、あの人誰ですか?」
彼がいなくなったところで無一郎くんがようやく声を出しました。
「風柱の不死川くんです。」
「…柱……?」
「はい。」
まあその説明は良いでしょう。
「無一郎くん、もう少し眠っていて良いのですよ。」
「……僕、試験に行きたいです。」
そう言われて驚いた。
「…だって、僕今日選別に行くんですよね。条件を達成しました。試験、受けられますよね。」
無一郎くんが詰め寄る。
私はそっと彼の肩に手を置いた。
「お、落ち着いて、無一郎くん。約束ですからね。」
「…!」
「大丈夫、私が今から君を鍛えてあげます。私はあなたを認めますよ時透無一郎。次の…次くらいの選別まで鍛練を頑張りましょう。」
私が笑うと無一郎くんは肩の手を振り払い、また詰め寄った。
「いつですか!いつなんですか選別は!!」
「え?……うーん…まだ報せがないので…。」
「では、次の次ではなく、一番近い選別は!」
「いえ、それは…。」
「僕、師範の条件を達成しました鬼殺隊になるためです。試験を受けさせてくれると師範は言いました、僕はすぐに剣士になりたいんです。」
必死そうな様子に我は困り果てた。
「でも…でも。そんなこと言っても、一番近い選別は…明日ですよ?」
「明日…」
「はい。あなたは今呼吸を会得しただけ。鬼との戦闘方法なんてわからないでしょう?」
私が苦笑しながら言うと、無一郎くんに変化があるのを感じた。