第53章 大正“浪漫”ー伍ー
「何か御用で?」
「おい待て。そのガキの説明をしろォ。」
疑り深く私を睨んでくる。
「つーか…何だこの有り様は。」
そしてボロボロの屋敷を見て目を細めた。
無一郎くんが強く隊服をつかんでくる。産屋敷や私以外の人間と会うのは初めてのことだ。不安なのかもしれない。
「不死川くん。手短に。はやく用件を言ってください。」
「……………。」
不死川くんはイライラしていたようだけど、答えてくれた。
「あんた、ここ最近報告書出してねぇだろ。その催促だよ。」
「ホウコクショ…」
「あぁ?寝惚けんな。」
私は冷や汗が吹き出てくるのがわかった。
……そういえば、急にこんなことになったから柱の仕事いまいち把握してないかも…!
そうだ、任務とか見廻りとかの報告書全部出さなきゃいけないんだった…!忘れてたやっばい。
「じゃあ明日には直接本部に出しに行きます。わざわざどうも。」
今から書けば間に合う…はず。つーか間に合わせないとやばくね?
「それより、そのガキはなんだァ」
私が悶々と考え事をしていると、不死川くんがまた聞いてきた。
「この子は…」
無一郎くんはまだ私にしがみついている。
「お館様から任されました継子です。」
私が言うと、不死川くんは眉を潜めた。
「継子ォ…?ハッ、あんたがかよ。」
「ええ、私がです。驚きでしょう?」
不死川くんは次に屋敷に目を向けました。
「で?あんたは家で暴れたのかい。」
「暴れたのは鬼ですねぇ。」
「は?」
「鬼が来たのですよ。大事がなくて良かった。ねぇ?」
無一郎くんを振り返ると、彼はこくんと頷いた。
「……あんな、何でそんなこと黙ってやがったッ!?」
それ言われると痛い。ごめん報告書の存在忘れてたんだ。
…でもこんな記憶はないぞ。前世の私はちゃんと仕事をしていたはずだ。
………桜くんの遺品といい、この夢前世と全く同じ…というわけではないのか?