第51章 大正“浪漫”ー参ー
無一郎くんを今度は私の部屋に寝かせ、香の説明をしっかり言い聞かせた。
言い聞かせても忘れてしまうのだから、意味がないのかもしれないけれど。
「今度こそ眠りましょうね」
私はそう言って去ろうとした。
けれど、隊服の裾をぎゅっとつかまれた。
「……」
「……」
無一郎くんは、何も言わなかった。
ほんの少し、寂しさのようなものが感じられたので。
私は彼が寝付くまで側にいた。
幸いすぐに寝付いてくれたので担当地区の見廻りに行くことにした。とりあえず夜の見廻りの間は、無一郎くんをガラスに任せた。
が、それも終わり屋敷に帰ると。
「はい、やって参りました現実と向き合うお時間です!!」
私は木材と工具箱を抱えて屋根に登った。
朝の太陽が眩しかった。
一睡もできてない。徹夜だけどしょうがない。鬼がぶっ壊した屋敷を何とかしないと。
雨風がしのげればそれで良い。贅沢は言わん。
バキバキにわれた縁側も何とか修復。
「みすぼらしいな」
「言うな、ガラス」
初心者がやった日曜大工なんてこんなもんだろう。まあ…多分大丈夫、なはず。
「それより、あの小僧はまだ寝てるのか」
「まあ昨日あんなことがあったらねぇ」
私は雑に修復した縁側に座った。
「寝るから、無一郎くんが起きたら起こしてくれます?」
「わかった。小僧は任せろ。」
布団がないので、縁側に座って柱にもたれるだけ。
太陽の光を浴びながら、私はやっと眠りについた。