第50章 大正“浪漫”ー弐ー
時間ギリギリというか、ピッタリに到着。
会議はすぐに終わる。
問題は終わった後。
「、少し残ってもらっても「はい!」………ありがとう。」
少し食いぎみに答えて、縁側から入るため草履を脱ごうとした。
「お館様、何の話ですか」
悲鳴縞先輩…いや、ここでは行冥。彼が尋ねる。
私は草履に手をかけてピタリと止まった。
「大切な話だよ。」
「我々にはお話しくださらないのですか。」
この嫌みったらしい言い方は、お館様に向けたようで、彼がそんなことをするはずもないので私に向けてだった。
「話が聞きたいのなら、聞き耳でも立ててみてはいかがでしょう。あなた、お耳が素晴らしく良いですよね。」
私はなるだけ、前世の口調を意識した。
「どういう意味だ。」
ピキ、と血管が浮かぶ。
行冥は煽るとすぐに怒る。
「お考えなさって。さあ、お話しとやらをお聞かせくださいお館様。」
「…良いのかい?」
少し不安そうに聞いてくる。私は頷いた。
「良いのではないですか?盗み聞きをする耳はないようですし。」
行冥だけでなく他の柱の視線が痛い。
懐かしい感覚。
ただでさえ嫌われているくせに、好かれようとする努力も何もせずにいた。秘密が暴かれることに怯えていた。
他の柱はともかく、行冥は後で何かうるさいくらい言ってくるかも。
それはちょっと面倒くさいなあ、と思っているうちに皆帰っていき、お館様は座られたので私は正面に座った。
付き添っていたお嬢様たちもそのお側に控えていた。
「、最近様子がおかしいとガラスから聞いたよ。大丈夫かな。」
「心配いりませんわ。私はあなたの方が心配ですけれど。お体はいかがです?」
「ありがとう。けれど、心配いらないよ。」
お館様は微笑む。
思えば、彼からはこれと目立ったものを感じ取れたことがなかった。
死ぬその時まで、何も表に出さずに、そうして生きていた。